2004年05月01日

松の花

世の中では見向きもされないような花でも、現にこうして生きている。

松の花は華やかなものではないので、その実態を人に知られる事は少ない。私のように松の花がどのようなものかを知らない人間は数多くいる。人は、自分に直接の関係がないものに関心を向けようとはしないものだからだ。

都会の生活の中では、松の花が咲くかどうかは全く無視しても問題ない事柄である。動物や植物に関心を向けなければならないのは、食料を確保する時だけだ。季節や天気、湿度や温度などの情報は天気予報で知る事が出来る。心に落ち着きや安心をもたらす為に花を生けたりもするが、華やかなものやメジャーなものでないと安心感が少ないので、松の花などは見向きもされない。

しかし確かに松の花は咲いている。天にも届かんとばかりに空へ高々と延ばした枝から花を咲かせる。この時期の松は黄色い花の柱が一斉に立ち上がる。花の柱がまず空に伸び、そこに根元から順に茶色いカプセルが生える。カプセルが剥がされ、一斉に花粉が放出される。そうして受粉した花が、松ぼっくりへと姿を変える。そんな姿を観察する人間はほとんどいないだろう。

昔の人々はこんな事もよく知っていたのであろうか。何かの必要があって知っていたのか、生活上の必要もないのに知っていたのか、昔の人も知らなかったのか、私は知らない。ただ、松の木は何十万年以上の昔から、ほとんど変わらずこのような営みを行なっていたのだ。命は人の感覚や理屈を遥かに超える存在なのだ。

Posted by ガスパーチョ at 2004年05月01日 23:59 | トラックバック
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